実録!!独立から美容室開業までの道のり

[記事内外にPRを含みます]

KAMIU編集部は年間100名以上の美容師様にインタビューをしております。

今回は、KAMIU編集部はある美容室オーナーのマツダさん(仮名)から、なぜ独立に至ったのか~開業までの道のりを伺うことができました。

開業して良かったことや、苦労したことから、学び取れることが多いのではないかと思います。

これから開業を考えている美容師の皆様は、ぜひ読んでみてくだい。

「将来への不安」から考え始めた独立

(マツダさん)

私は、新卒で表参道のサロンに入社して、9年間お世話になりました。その後、既に独立していた友人に声をかけてもらって転職することになります。そこで得た数々の貴重な経験を元に、地元の横浜で小規模サロンを開業しました。

 

お店を持つということは初めから考えていましたし、私の目標でもありました。私達の世代は美容ブームの少し前の世代ですが、美容師という職業に憧れて、表参道の有名サロンで働き、将来的には自分のお店を持ちたいと考えていました。

 

新卒で入ったサロンは、周りと比較してもかなり厳しい方のサロンだったかと思います。時間が無いのはもちろんですが、他のサロンへ就職した同期と比べても、かなり手取りが少なかったのを覚えています。練習を深夜1時頃に終えた後に、同期と自宅近くBARでアルバイトをしていました。

正直、この頃は自分の店を持つという目標が遥か遠くに感じ、5年目でスタイリストデビューをするまでは、1日1日を必死に耐え忍んでいる様な状態でした。ただ、今考えると全て良い思い出です。きっと、美容師の皆さんなら似た経験が誰しもあるかと思います。

 

デビューしてからは、比較的に順調だったと思います。売上も順調に伸びていて、数字が伸びていくことへの楽しさを感じるようになっていました。しかし、お金に関しては不満がなかったというわけではありませんでした。順調に売上が伸びる一方で、給与面にあまり反映されていませんでした。周りには、独立して上手くやっている同期も何人かいたので、将来への不安と焦りを感じるようになり、自然と次のステップとして自分のお店を持つことをなんとなく視野に入れ始めたのが、ぎりぎり20代の頃でした。

美容師が独立を考え始める時期とその理由

多くの美容師は、マツダさん(仮名)のように、30歳前後で独立を考えると言われています。

美容師というのは、30歳という年齢がひとつの分かれ道だと言われています。独立するか、マネージメント業務を担当するか、後進の指導に当たるか、どのような道に進むのか真剣に考えなくてはならない年齢が30歳であるのだそうです。 その理由として、客層の年齢・年代というのが大きく関わってきます。やはりメインの客筋が若い年齢の女性ということで、35歳を超えるとなかなか店には出られなくなってしまうのです。そのため、節目でもある30歳という年齢の前後で独立を考える方が多いのでしょう。

引用:キャリアパーク!(美容師の世界における現状と独立すべき年齢)

独立・開業の理由は様々ですが、30代前後にタイミングが重なるのは、決して偶然ではないでしょう。

面貸しという半独立

(マツダさん)

独立すると言っても店を持つための資金すらない状況だったので、一旦はお金を貯める期間が必要だと考えて、給与面でより好条件なサロンへ移ることを考え始めました。

そんな時、友人の一人が店舗拡大のため移転する際に、新しくスタッフを募集しており、来てくれないかと誘われました。表参道の真ん中からは少し外れるサロンでしたが、面貸しという形でかなり好条件でしたので、私はその友人の店へ移ることにしました。後々かなり後悔することになるのですが、この時は相手が友人ということもあったので、細かなことは決めていませんでした。やはり、お金のことに関してはいかなる場合においても、明確に決めておくことが重要だと痛感しました。

面貸しのメリットとデメリット

面貸しという働き方は、個人事業主としてサロンからセット面を借りて施術を行うスタイルです。

面貸し(めんがし、めんかし)、あるいは、ミラーレンタルは、美容所(美容院、美容室、サロンなどと称する)が、フリーランスの美容師に場所と施術に必要な施設を提供して、対価を得るという運営形態。 フリーランスの美容師は、個人事業主として、面貸しする美容所と業務委託契約を結んで、働いているという形になる。

引用:面貸し – Wikipedia

そのメリットとデメリットは、以前このブログでも紹介させていただいたので、以下にまとめました。

メリット

  • 所得/給与があがる
  • 自由時間が格段にあがる
  • 人間関係の煩わしさ開放される

デメリット

  • 確定申告や社会保険など面倒な手続きが増える
  • 4.2 お客様が離れると命取りになる

引用:フリーランス美容師とは?面貸しのメリット3点とデメリットを検証してみた

ただし、マツダさん(仮名)のように知人や友人のサロンから席を借りる場合、細かなところで問題が生じる可能性があるので、注意が必要です。

準備するべき美容室の開業資金

一般的に美容室の開業には約1000万円ほど必要と言われています。ただし、規模やエリアなど様々な要因でかなり前後するので、事前にどの様なサロンを目指すのかを明確にする必要があります。

ここでは、個人サロンを経営されているマツダさん(仮名)のケースをご紹介します。

【スケルトン,スタイリスト1名,セット面2,シャンプー台1,13坪】

自己資金 250万円+融資500万円=合計準備金750万円

  • 物件の取得費用・・・・・・約130万円(初月家賃込み)
  • 内装工事費用・・・・・・・約200万円
  • 機器や道具類の設備費用・・約100万円
  • 広告費・・・・・・・・・・約30万円(初回 折込チラシなど)
  • その他・・・・・・・・・・約6万円
  • 運転資金・・・・・・・・・約240万円(6ヶ月分)

準備資金の合計金額 約656万円

 

参考記事

間近で見た美容室経営の難しさ

(マツダさん)

友人の移転する前のサロンは、セット面が4つの住宅街の小型サロンでした。3名のスタイリストで始めた美容室でしたが、集客状況がかなり順調であったため、2年で手狭に感じるようになり、隣町の駅近に8セットのサロンを作って勝負に出たのです。

当時、スタイリスト3名で売上が500万円を超える月もあったらしく、かなり自信もあったのだと思います。しかし、無情にも問題は移転して直ぐにやってきました。

開業して半年ほどたった時期に、移転前から所属していたスタッフが退職を申し出たのです。前店に比べて2倍の8セットとなったサロンですが、求人が思うようにいかず、アシスタントが1名加わりましたが、まだ私以外に新しいスタイリストを雇い入れることができていませんでした。そんな中での退職願いだったので、友人は強く引き止めましたが、3ヶ月後に退社しました。売上にして100万円近くが無くなったのです。

問題は続けておきました。なんと、もう1名のスタッフも退職を申し出たのです。女性のスタッフだったのですが、結婚が理由とのことでした。友人にはどうすることもできず、結果的にそのスタッフも直ぐに退社し、移転してわずか半年足らずで8セットのサロンに、スタイリストは友人と私の2名で、アシスタントが1名いるだけんのサロンになりました。

求人の難しさ

美容室は、毎年1万3千件近く開業しています。

一方で、美容師試験の合格者数は、美容ブーム後の2005年度の33,115人をピークに、右肩下がりを続けており、2014年度の時点で19,754人となっています。

出典:公益社団法人 理容師美容師試験研修センターHP(過去の試験実施状況)

 

年々、新卒はもちろん若手スタイリストの採用が難しくなっているのです。更に、求人の需要が高まるにつれて、求人媒体への掲載料金なども高騰してくると考えられます。

自身が思い描き、開業・独立する美容室に、美容師は何名で実現可能かどうかをしっかり見極める必要があります。

 

間近で見た美容室の廃業

(マツダさん)

後からわかったことですが、1ヶ月の賃料だけでも60万円以上であったため、2名のスタイリストが抜けた時点で殆ど利益がない状態になっていました。加えて、辞めた女性スタッフが近くのサロンで仕事を再開していたことが直ぐに判明し、退職理由が嘘であったことが精神的にかなり堪えたようでした。友人は、精神的にもかなり不安定な状態になっていきました。そして、友人と私の間にも問題が生じ始めます。

 

まず、私は転職した当初は指名売上が多くありませんでした。立地的にはそれほど前のサロンと離れてはいませんでしたが、友人が店で集客したフリー客を順番で入客させてもらえるという話でしたので、前職からお客様を持っていくというのが、そもそもご法度の業界ですので、一部を除いて大部分のお客様へは案内せずに退職したのです。しかし、2名のスタッフが辞めてからはランニングコストを抑えるために、集客へ割くお金を減らしたため、みるみる新規集客数が減っていきました。最終的には、私への入客は全くなくなってしまったのです。

 

友人とは長い付き合いで、状況的にも同情する部分が多く、私としても最大限力になってあげなければと思っていましたので、友人との相談を重ねながら、状況が改善されるよう私なりに努めました。結果的に、状況は大きく改善されることがないまま、2年目に友人は店を閉める決断をしました。

私自身の生活もかかっており、美容室を開業するという目標を達成するためにした転職でしたので、途中何度も独立を考えていると友人に打ち明けましたが、残ってほしいという友人の頼みを断りきれず、結果的に2年間務めることとなりました。

美容室の廃業理由

赤字経営での破綻だとして、考えられる理由は基本的には2つ下記の2つではないでしょうか。

  • 売上の減少 (例:新規客の減少,単価の減少,スタッフの退職,災害や事故など)
  • 費用の増加 (例:家賃の値上げ,材料の値上げ,集客・広告費用の増加)

それも、どちらがと言うよりはこの2つのバランスが保てなくなった時に、お店を閉められるケースが多いように思います。

 

理念&コンセプト設計の重要性

(マツダさん)

それから直ぐに、私は開業することになるのですが、サロンオーナーである友人を間近で見てきたことで、「自分ならこうする」という積み重ねがあったからこそ、現在のサロンのイメージを固めることができました。

自分がどのんなサロンをやりたいのか。とことん突き詰めることが重要だと感じました。

その上で、「ターゲット,出店場所,サロン規模,マーケティング方法…」が固まっていくのだと思います。

「なんとなく将来が不安だから」といった、マイナスな理由での独立・開業することはおすすめできません。それでは、お客様もスタッフも誰も付いて来てはくれなくなってしまうのです。

理念&コンセプトを立てる方法

KAMIU編集部は、これまでにも多くの美容室オーナー様とお会いしてきましたが、長く経営されているお店には共通して、独立・開業時から強固な理念とコンセプトがありました。

理念とコンセプトの違いは以下の通りです。

り‐ねん【理念】

ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え。「憲法の―を尊重する」
哲学で、純粋に理性によって立てられる超経験的な最高の理想的概念。プラトンのイデアに由来。
コンセプト(concept)

概念。観念。
創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点。「コンセプトのある広告」
少しややこしいですが、会社や個人のあり方に付随するものが理念であり、事業やブランドに付随するものがコンセプトになります。
例えば、国内最大手でAshを運営するアルテサロンホールディングスの経営理念にはこう記されています。
地域のお客様に『美と健康と若々しさ』を提供し、当社グループに関わるすべての人と共に幸福社会を築いていける会社づくりを目指してまいります。
引用:株式会社アルテサロンホールディングスHP(理念・ビジョン
そして、ブランド別にコンセプトがあります。
  1. 駅から近くて便利!
  2. 技術力
  3. 心からのおもてなし

引用:Ash HP(コンセプト

ぜひ、参考にしてみてください。

独立・開業を考えてから、まず考えるべきポイントは以下の5点です。

  • いつ
  • 何処で
  • 誰に
  • 何を
  • どうやって

もちろん、ゼロベースで考えるのはかなり難しいと思います。

しかし、独立・開業を目指す以上は、誰しも自身がやってみたい、働き方やスタイルや雰囲気が、何かあるのではないでしょうか。

それを、突き詰めていくことが独立・開業への一番近道ではないでしょうか。